第2回 アメリカでの妊娠出産記録

  アメリカの病院で出産しました。
 薬剤師のSAKINAです。
 今回はアメリカでの出産体験についてお話ししようと思います。
 まず、日本とアメリカでの出産で大きく違うと感じたことは4つあります。
 1つ目は出産方法です。日本ではまだまだ経腟分娩が主流なのに対し、アメリカでは無痛分娩が主流で60%以上の妊婦は無痛分娩とのデータがあります。今回私はアメリカで自然分娩で出産をしました。もともと無痛分娩を予定していたのですが、家で陣痛に耐えた結果病院に到着した時点ですでに産まれそうな状態だったため、麻酔薬を使用する時間がありませんでした。そのため実際に出産時に使用する際の様子はわかりませんが、麻酔薬を使用するにあたって特にハードルはないような印象を受けました。予めしたことは、無痛分娩を希望するかどうか大学病院に出産予約を取りに行く際に聞かれ、その場で硬膜外麻酔の使用リスクに関する短いビデオを見ただけでした。  2つ目の違いは入院期間の長さです。日本では産後の入院期間は自然分娩なら5日から1週間ですが、アメリカは通常出産後から48時間以内です。経産婦などの中には1日で退院する人もいるようです。私の場合は明け方に出産したため、出産した日の朝からその二日後の夜までほぼ3日入院することができました。病室は母子同室の一人部屋で、シャワー、トイレ、テレビ、付添人も泊まれるソファーが完備されていたため比較的ゆっくり過ごせました。しかし、実際に家に戻ってからはさすがに3日での退院は体力的にも精神的にも厳しいと感じました。ちなみに入院中は主人が急遽休みをとってくれたため、一緒に入院生活を送ってもらえました。そのあたりの家族の事情を優先できる職場の環境はさすがアメリカだと思いました。
 3つ目の違いはかかりつけ病院の存在です。まず、アメリカで出産する場合は生まれる前から子供のために事前に小児科クリニックもしくは担当医を決めた方がよいです。入院している病院に小児科はどこにするか聞かれます。なぜなら、出産後病院がその小児科に連絡を取り、小児科の医師が病室まで診察に来るからです。私の場合出産した翌日、翌々日の朝に小児科クリニックの先生が赤ちゃんの診察に来ました。そして、アメリカでは入院期間が短い分、最初の検診は生後1週間の時にあります。その検診はそのかかりつけ医・かかりつけ病院で行われます。病院・担当医を決めるにあたっては、妊娠中のお母さんは小児科で開かれる説明会に参加したり、医師へ直接インタビューして情報収集をするようです。実際にこの制度を経験して、産まれた直後から子供のかかりつけ病院があるというのは非常に心強いと思いました。また、かかりつけ医が様子を見に来るのは赤ちゃんだけでなく母親もです。私の場合、産婦人科クリニックの担当医が出産の翌日、翌々日病室まで診察に来てくれました。なお、その後の産婦人科クリニックの受診は6週間後でした。
 4つ目の違いは医療費です。今回のアメリカでの分娩および入院費用の保険適用前の総額は、なんと約16000ドル(1ドル110円だと約170万円)でした。日本での普通分娩にかかる費用は、出産育児一時金42万円を受け取る前では平均約50万なので、3倍以上です。無保険での出産は非常に高いです。保険適応後の額は加入している保険にもよりますが、私の場合は保険のおかげで約840ドル(約9万円)でした。
 他にもいくつか違う点はありました。アメリカでは母乳マッサージや沐浴指導がなかったり、子供の名前を入院中に決める必要があったり(病院の方が登録申請してくれるため)しました。特に入院中の食事の違いは顕著でした。病院からお祝いで甘いカップケーキをもらったり、食事のメニューがハンバーガー、ミートローフ、フライドチキン、チーズケーキといったアメリカンなものばかりだったのはなかなかのカルチャーショックでした。
 反対に日本とアメリカで似てると思った点は、アメリカの病院でも出産準備教室(有料)があることです。ただどのクラスもパートナーとの参加が推奨されていました。私が参加した母乳育児教室にも、実際に多くの方が夫婦で参加していたのには少し驚きました。病院の他の催しとしては、分娩室・病室・夜間の病院入り口など実際のお産の際に関わる場所や当日の流れを案内してくれる院内ツアー(無料)がありました。そのツアーも参加者のほとんどが夫婦で参加していていました。
 他には、日本とアメリカでの新生児の健康管理も同じような内容であると思いました。入院中に新生児は新生児スクリーニング(血液検査、聴覚検査、パルスオキシメトリテスト)を受け、B型肝炎ワクチン・エリスロマイシン眼軟膏・ビタミンKシロップの投与を受けました。ただ日本では新生児マススクリーニングは生後4日~7日で実施されますが、アメリカでは入院期間が短いので生後24~48時間の間に行われるのが一般的なようです。  この度アメリカでお産を経験した全体的な感想としては、もう少し長く病院で過ごしたかったというのが正直なところでした。

 

・第1回 アメリカでの妊婦検診体験
・第2回 アメリカでの妊娠出産記録
・第3回 日本とアメリカのワクチン接種について
・第4回 ラクテーションコンサルタントにお世話になった体験談
・第5回 アメリカの搾乳機について
・第6回 アメリカの赤ちゃん用ミルクについて
・第7回 新型コロナウイルスについて@ケンタッキー州 Part 1
・第8回 新型コロナウイルスについて@ケンタッキー州 Part 2
・第9回 アメリカの産休育休事情
・第10回 第10回 新型コロナウイルス事情について@ケンタッキー州(7月の状況)
・第11回 病院受診について~整形外科(Orthopedics)編~
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