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幸年期講座潜入体験 第七話

症状が辛いときは、“さなぎになる”と宣言するのも対処のひとつ

更年期をテーマにした話は奥が深く、私が参加したセミナーだけでは、知り得なかった情報もあります。そこで今回は、宮原先生が講師をされる某企業の女性向けセミナーに参加させていただき、新たな情報をキャッチしてきました。

現在の日本では、更年期についてのセミナー自体が少なく、参加したことのある人はほとんどいないのが実状です。講座の後の感想にはいつも必ず「もっと早く知っていたかった」とあるそうです。今回も、更年期について初めて話を聞くという人が多いようで、最初は、多少緊張した雰囲気が伝わってきました。しかしそこは、百戦錬磨の宮原先生。「更年期は勉強するものじゃなく、体得するものです。今日はあまり真剣にならず、よしもと漫才のような、“みやちゃんよもやまばなし”を聴きに来たような気持ちで参加してください」と語ると、場の空気が一度になごみました。

時間は70分。その中で、これまでこのコーナーで紹介してきたことに加えて、更年期の症状が現れてきたときの対処法について、アドバイスをいただきました。

更年期の症状は、のぼせ、ほてり、発汗、不眠、頻尿、動悸、性交痛など人や時期によりさまざまに出現します。宮原先生によると、こうした症状の改善には、ホルモン補充療法(以下、HRT=HTともいいます)がとても効果的とのこと。HRTとは、閉経にともない低下したエストロゲンを、飲み薬や貼り薬で補う治療方法です。とても効果的な半面、「HRTをするとがんになる確率が増えるのでは?」と心配する声が多いのも事実。私自身、それを心配してホルモン補充療法は避けてきた経緯があるため、とても気になる点でした。

先生によると、エストロゲンが乳がんや卵巣がんなどの直接的原因になることはないそうです。エストロゲンは月経のときに増える女性ホルモン。エストロゲンでがんになるのであれば、女性の大半はがんになってしまいます。実際は、エストロゲンはがんの原因(イニシエーター)になるわけではなく、すでにできているがん細胞のえさ(プロモーター)になるとのわかりやすい説明でした。エストロゲンに関わる臓器のがんが既に体内にある場合にはそれを大きくする可能性もあるため、HRTの前や治療中は必ず乳がん検診や子宮・卵巣の検診を行いましょうということです。定期的な検診を受けていれば、早期発見ができるため、深刻な事態を避けることができるというメリットもあるそうです。

それよりも、先生が注意を促す副作用は「エコノミー症候群といわれる深部静脈血栓」とのこと。長時間同じ姿勢で仕事をする人や長時間飛行機に乗る人は、薬剤師や医師に相談して、副作用が起きた時の初期症状に注意しながら、状況によっては治療を一時中断することも視野に入れながら行なうことが必要です。

「でもやっぱりHRTには抵抗がある」、という人には、まずは気になるサプリメントや市販薬を試してみることが提案されました。大豆のイソフラボンの成分が体内で腸内細菌 により代謝されてつくられる『エクオール)』(大塚製薬の「エクエル」)や、フラボノイド製剤など更年期の患者様の食生活を応援する健康食品があります。 実際に健康食品などで体調を整えても十分な変化がない場合は一般医療用医薬品などの中にもお勧めのものがあります。ぜひ薬局で薬剤師に相談してみてください。

それでも症状が改善しない場合、宮原先生は短期間でもHRTを試してみることを推奨していらっしゃいました。女性ホルモンを補充することで、体全体の調子の改善が期待できるそうです。

そのために重要なことは、かかりつけの産婦人科医師をもつことです。日本女性医学学会のHPにお勧めの医療者リストがあるそうです。参考にしてみてください。症状改善のためには、自分がどのような栄養素をどのような食品からとっているのか、食習慣を確認してみることも重要です。個人でも利用できるシステム(EBNJAPAN)があるとのこと。ぜひチャレンジしてみてください。

毎日の生活のとらえ方も大事です。宮原先生は「症状が辛いときは、さなぎになりましょう」と提案されています。女性は症状が辛いときもつい、家族のためにと家事を頑張ってしまいがち。それではさらに症状を悪化させて、健康寿命を縮めてしまいます。とくに寝る2時間前は、あまり働き過ぎないことが眠りの質を高めて症状を改善させるポイント。その時間になったら、「お母さんはさなぎになります」と家族に宣言して、一切の家事は放棄するのです。家族は最初のうちは、動かない母を心配したり、文句を言ったり反応は様々ですが、そのうち、自分でできることは自分でやってくれるようになるようです。

更年期は、家族の自立のためにも好機。それまで家族のために頑張ってきた母という役割からの、卒業の時期でもあるのです。さなぎになって、その後の人生を自分らしく羽ばたく“蝶”になる準備を始めましょう。

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