【日時】平成22年10月15日(金)〜17日(日)
・第33回日本高血圧学会総会 『包括的なリスク管理を目指して?』(外部サイト)
第33回日本高血圧学会総会 『包括的なリスク管理を目指して?』にシンポジストとして参加しました。
薬剤師の役割り 処方箋~服薬指導~お薬手帳 をめぐる点と線
<はじめに>
平成19年4月の医療法改正において、調剤を実施する薬局は「医療提供施設」といちづけられました。その条文では下記の通り明記されています。
医療は国民自らの健康の保持増進のための努力を基礎として、医療を受ける者の意向を十分尊重し、病院、診療所、介護老人保健施設、調剤を実施する薬局その他の医療を提供する施設(以下「医療提供施設」、医療を受ける者の居宅等において、医療提供施設の機能(以下「医療機能」という)に応じ効率的に、かつ、福祉サービスその他の関連するサービスとの有機的な連携を図りつつ提供されなければならない(下線改訂部分) 高血圧患者を対象とした保健医療は、これらの連携がしっかりなされれば、その目標が十分に達成できる実現性の高い領域と考えられます。
<医薬品の適正使用をふまえた処方と高血圧服薬指導>
“医薬品の適正使用”のサイクルは、次のようなステップで成り立ちます。
患者の受診により、
①医師による確定診断
②薬物療法における医薬品の選択・用法用量の決定、
③医師による疾患の説明とともに行われる服薬指導に続き行われる、
④薬剤師による調剤と服薬指導
さらに、
⑤患者が正しく理解したのちに正しく服薬する、
⑥副作用の第一発見者が患者であるという考えに基づいたリスクマネジメントの指導がそのベースにおかれていることも重要です。
そののち、
⑦副作用の有無あるいは有用性を患者が医師に話すことにより、
⑧医師がその患者に対する薬物治療のリスクベネフィットを把握し
⑨次の処方につなげるという一連の流れを医薬品の適正使用と考えます。
主役は、患者でありますが、医師と薬剤師も同じベクトル(同じ方向性を示す説明と理解)がなければこのサイクルは成立しないことも課題のひとつとなります。
<薬歴とお薬手帳の活用>
「連続した記録の活用」の基盤となる「薬歴とお薬手帳」の有効活用が一人ひとりの住民(患者)のとても有効な手段となることが様々な場面で立証されています。薬歴とお薬手帳は医薬品の適正使用を目的として調剤の現場で活用される手法とツールです。
主な機能として、
(1)患者の病態変化の時系列情報、
(2)能動的記録を活用した医薬品の安全性の確保、
(3)「患者・医師・薬剤師の3者連携のための情報共有」
などがあげられ、患者教育や適正な服薬指導に応用されています。特にお薬手帳は、患者に対してその都度に応じた服薬指導をしたり、理解度を把握したりすることが可能になる重要なツールです。薬歴は、患者や医師からの問合せに迅速に的確に時系列的に照会できる有用なツールです。
<住民への健康啓発指導~健康診断などを契機とした保健指導>
高血圧症に関しては、服薬指導も重要になりますが、もうひとつ忘れてはならない領域に、住民への血圧に関する健康啓発の機会の提供と、健康診断による血圧測定後のフォロー(特に境界域高血圧の方)や家庭内血圧測定の普及啓発活動があります。
薬局は、日常よくみられる風邪などでの処方箋による調剤を受ける場所であると同時に常に健康に関して何らかの関心がある住民が立ち寄る場所でもあります。地域住民への健康情報を提供する機会を有効に活用し、高血圧症に関するガイドラインや血圧計の正しい使い方などのセルフモニタリング技能の指導、受診勧告を常に心がけてゆくことが重要と考えています。薬局という箱物を使った生活習慣指導へのイージーアクセスも今後は注目されていくのではないかと考えています。
<おわりに>
高血圧の予防・治療に関わる情報を薬物療法にも生活習慣指導にもお薬手帳という患者ベースのツールを使用し医師と薬剤師の有機的連携づくりに期待いたします。
(株)ジェンダーメディカルリサーチ代表取締役 宮原富士子(薬剤師)